※7話と8話の間で捏造。刑務官×遊星。
色々酷いので嫌な予感がした方はブラウザバック推奨。
連れて行かれた先は取調室とは名ばかりの狭い部屋。
開けられた鉄の扉の前で立ち止まり、遊星はざっと室内を見渡した。とはいえ然程広くはない部屋だ、それだけで大体を把握した遊星は、その異様な雰囲気を感じ取り無意識に眉根を寄せる。
広さは監房の二人部屋より狭く、窓も無く照明もくすんだ蛍光灯がひとつで心なしか部屋全体が薄暗いように思う。室内にはごく小さな机と椅子が一脚ずつ置いてあったが、この部屋で目につくものと言えばそれだけで、とても取り調べに使うものとは思えない。
そしてもうひとつ、どうやらこの"取調室"周辺の建物は他よりも古いのか、コンクリートが剥き出しの床や壁に年月を思わせる染みが幾つも目についた。監房には殆ど無かったもので、同室の矢薙があの部屋は比較的新しいと言っていたのを思い出す。
…異様な雰囲気がするのは恐らくこの所為だ。
余りにも他の場所と違う雰囲気と胸中に募る嫌な予感に、思わず表情が険しくなる。
「ほら、入れ!」
「っ、…」
此処まで連れて来た時同様強引に背中を押されて、つんのめるように部屋に入った遊星は数歩たたらを踏んで立ち止まった。それに続いて刑務官の男たちも入室し、重い音を立てる扉が背後で閉まる。御丁寧に鍵を掛ける音まで聞こえた。
「…さぁて。G2MA2-88号、不動遊星」
人の神経を逆撫でするような声に不適格者としての名で呼ばれ、遊星は険しい表情のまま首だけでその方を振り返る。
しかしその瞬間、それまで自由だった腕を掴まれ後ろ手で突然拘束された。
「ッ! 何を…っ、」
「所長の取り調べまで暫くある。少し付き合って貰うぞ」
咄嗟に振りほどこうとするが刑務官の力は思ったより強く、焦る遊星の両腕にがちゃりと音を立てて手錠が嵌められる。
嫌な予感が頭の中で警鐘を鳴らす。
「再教育プログラムの一環だと思え。…抵抗したら、わかるな?」
治安の悪いサテライトで暮らせばそんな目に遭うことだってある。
幸いにして遊星自身が被害に遭うことはこれまでなかったが、仲間や周囲からそんな噂は幾らでも入って来た。だがそれが自分の身に降り掛かるなんて誰が思うだろうか。
「っぐ、…っ、ぅ、ッ…、」
狭いそこに捩じ込まれた指が無遠慮に内を掻き回す。滑りも持たず強引に侵入してきたそれは遊星が傷付こうが何だろうが構わない様子で、襲い来る痛みと不快感に必死で歯を食い縛った。
出来る抵抗はしたつもりだった。だが相手は犯罪者を監視する立場であり、それ相応の訓練を積んだ刑務官。当然抵抗は簡単に封じられ、容赦無く何度か腹を蹴られた所為で身体に力が入らず、殆ど何の抵抗も出来ないまま身体を暴かれて。血は吐かなかったが内出血を起こしたのか、眼下に曝された腹部は何ヵ所かが赤黒い痣になっていた。
床に崩れ落ちた遊星の手首を拘束する手錠は壁に縫い付けられ、腕を吊り上げられ前開きのジャケット以外の服を剥がれて後孔を指で犯される。
不快以外の何物でもないその暴挙に、何が取り調べだと遊星は内心で毒吐いた。
此処に連れてきたのは最初からこういうつもりだったのだろう。恐らく此処はそういう部屋で、連れて来られる前にあった新人歓迎会といった無法振りを考えれば、刑務官たちの暴行や拷問が上に黙認されていることも容易く想像がつく。それすらもどうせ、ただ単に自分達よりも下等なサテライトの住民や犯罪者を痛め付けて優越感に浸りたいだけだ。
愉悦に口許を歪める正面の男を、遊星はギッと鋭い目で睨み付ける。
「強情な奴だ、…お前のその生意気な目が気に入らない」
「ッ! …う、っ、」
無理矢理挿れられた三本もの指をぐ、とより深く突き入れられ息が詰まる。身体を貫く苦痛に、ともすれば情けない悲鳴に変わってしまいそうな声が零れるのを咄嗟に唇を噛んで堪え、尚も遊星は紺青の瞳を鋭くした。
何処までも反抗的な遊星の態度に、刑務官の男は指で虐げることに飽きたのか唐突に全ての指を引き抜く。その感覚にびくりと身体を震わせた遊星は見下す男の顔に浮かぶ嘲笑を睨め付け、荒らぐ息を抑えながら口を開いた。
「…気に…入らない、から、…こんなことをする、のか、」
「頭は悪くないようだな。その通りだ」
男はきっぱりとそう言って嫌味な笑みを浮かべる。
「何故こんなことが許されるのかって? …所長はサテライト住民がお嫌いでね、寧ろ許可を下さった程だ」
「!」
ぐいと顎を掴まれ、さもこの状況が愉快だと言わんばかりの目が遊星の視線と交錯する。
「愚かな屑共に自分の立場を解らせてやれ、だそうだ。…サテライトの下層市民など、お前たちが片付けているゴミと同じだとな!」
「ッ…!」
嘲笑う男たちに遊星はぎりと奥歯を噛み、拘束されている手を爪が食い込む程に握り締めた。
込み上げてくる怒りを抑える気など毛頭無い。こんな奴らに屈する必要もありはしない。
――馬鹿にするな。
サテライトで――シティという名ばかりの楽園から切り離されたあの世界で、それでも必死に暮らしている人々を。
「…れが、屑だ」
「あぁ? 何だ、逆らうつもり…ガハッ!!」
低く呟いた声に、訊き返した刑務官が隙を見せたのを遊星は逃さなかった。
不安定な体勢から身体を捻り、自由だった右足を振り上げて男の顔を思い切り蹴り飛ばす。
「ふざけるのも大概にしろ。…勝手に下層と決めつけられて、それでも必死に生きている人たちを屑呼ばわりか!」
怒りと憤りを込めた衝撃に吹っ飛ばされた刑務官を、怒気を湛えた青眼が睥睨する。
…どいつもこいつもクズだのゴミだの、もう聞き飽きた。
「――サテライトの人たちより、おまえたちの方が余程腐っている!!」
激昂した遊星に、少し離れた位置まで蹴り飛ばされた男はもう一人の刑務官に支えられて漸く身を起こした。
しかしそれでも口元に浮かべたのは酷く不快な笑み。
「…やってくれたな…言いたいことはそれだけか?」
「ッ、…!!」
男が再び近付いて来たと思った次の瞬間、剥き出しの腹を強い衝撃が襲った。
悲鳴を上げる間も無く意識が飛んだように思えたがそれはほんの一瞬で。続けて二度、三度と男の靴先が減り込み、まるで首を絞められたように息が出来ずに嘔吐く。
「ぐ、ァ、…っが、」
「不適格者がいい気になるなよ…サテライトのゴミの分際で」
苦しさに上体を支え切れず項垂れていた前髪を掴まれ、無理矢理上を向かされる。
霞みかけた遊星の視界に映ったのは、くすんだ蛍光灯に照らされた絶望を告げる黒い影だった。
「――ッい、…あ゛、ぐあぁあ…!!」
ぎちぎちと、凶悪な質量のそれが身体を貫いていく。
キツい、なんて言葉が舌打ちと共に聞こえた気がしたが当たり前だ。そこは何かを受け入れる為の器官ではない。
「ッ、あ゛、ァ、ッが…は、っ、」
背が軋む。息が出来ない。痛い。いたい。
無慈悲にも男の怒張を突き入れられて身体ががくがくと痙攣を起こす。激痛のあまり飛びかけた意識は激痛によって呼び戻され、呼吸もままならず仰け反った喉がひゅうひゅうと音を立てる。飲み込めない唾液が閉じられない口端から零れて喉を伝い、見開いた瞳からは涙が流れ落ちた。
拘束から無意識に逃れようとする腕に手錠が食い込む痛みなど生易しい。先程蹴り飛ばされた衝撃も今思えば可愛いものだ。
――痛い。
全身から嫌な汗が噴き出したようだった。あまりの痛みに血の気は失せ、感じたことのない恐怖に頭が真っ白になる。
遊星の身体を犯すものとは別に、それらは内側から遊星を侵していって。
「っひ、…あ、が…、」
「くっくっ…いい様だな」
「ぐ、っあ、…かはッ、…!」
言葉にも呼吸にもならない声ばかりが口からは溢れ、目の焦点が合わなくなる。抱えられた足先が容赦無い律動に合わせて宙を掻き、冷たい手錠と腕を吊り上げる短い鎖がコンクリートの壁にぶつかって音を立て、けれどもそれらは遊星の思考まで届いては来なかった。
痛みと不快感と込み上げる吐き気とが、今自分の身に起きている事実以外を考える余裕を与えてはくれない。
――それでも、消えかける意識を必死で繋ぎ止めて、遊星は歯を食い縛る。
頭の中を渦巻くのは怒りと悔しさと幾許かの感情と。
屈してなるものか。
こんな奴ら相手に、決して。
「…あぁ、…お前のような奴には痛みより屈辱の方が効果的か?」
「ッ! うぁ、」
何かに気付いたような言葉と共に、身体を貫いていたものを唐突に引き抜かれた。
内を犯していたものが去った感覚に遊星が安堵する間も無く、壁に引っ掛けられていた手錠を掴まれて床に引き倒される。未だ痙攣する身体とずっと吊られていた所為で痛む腕は直ぐには動いてくれず、体勢を立て直す前に腰を抱え上げられ再度貫かれた。
上げかけた悲鳴は噛み殺すが、手錠を掛けられた手と膝とで四つ這いにされ、律動を開始される。
「う、っ…ぐ、…ぁ、う、」
「おい、そっちも使ってやれ」
「ああ」
「ッ、ん、ぐ…!」
遊星を後ろから犯す男の声に、それまで殆ど傍観するだけでずっと椅子に腰を掛けていたもう一人の男が傍まで来て自身を取り出し、それを苦しげな呼吸を繰り返す遊星の口へと突っ込んだ。当然遊星は反射的に拒絶しようとするが、頭を掴まれて抵抗を封じられ、更に喉の奥へと押し込まれてしまう。吐き出すことも出来ず込み上げる嘔吐感に遊星は思い切り顔を顰めた。
けれどもそんな些細なことに男たちが構う筈も無く。
「どうだ、悔しいか? お前の言うような奴らにこんなことをされて」
「っ、ぐ…ぅ、ん、ッ、」
容赦の無い注挿を前と後ろで繰り返され、更には言葉で詰られ。
与えられる屈辱は確かに痛みよりも遊星に打撃を与えるものだった。直接的な苦痛より、いいように犯される現状に抵抗すら許されない現実を思い知らされる方が、プライドの高い遊星には余程堪える。
だがどんな屈辱を受けようと、どんなに陵辱されようと屈するわけにはいかない。
クズだゴミだと馬鹿にされ、サテライトの善良な人々を侮辱するこいつらに屈するなど、絶対に。
「っ…、」
「!」
遊星の頭上で、口を犯していた男が息を詰める。気付いた時には口内で質量を増したものが弾け、喉の奥に熱いものが注ぎ込まれた。
一瞬何が起きたのかわからず瞠目した遊星はその異様な感覚と同時に襲い来る吐き気に抗えず口の中のものを吐き出そうとする。だが口は未だ男のものによって塞がれていて吐き出されたものを嚥下することを余儀なくされ、込み上げる不快感ごと拒絶する身体を抑え込むようにしてそれを飲み込んだ。
するとまるでそれを待っていたかのように男は遊星の口から自身を引き抜き、漸く片方を解放された遊星はその場に崩れ落ちた。
「ッ、う、っげほ、ゲホッ、ゴホ…ッ!」
急激に取り込んだ酸素に噎せ、治まらない吐き気に耐え切れず嘔吐く。口内に僅かに残る飲み切れなかった白濁が口の端から零れて床に落ち、それが遊星に現実を突き付ける。
それでも、…それでも屈するわけにはいかない。そう自分に言い聞かせ、少しでも無様な姿は晒すまいと崩れた両腕に力を込めて上体を起こす。
「強情だな、大人しく従えば楽になれるぞ?」
「…ッ…誰が…屈したりなど、するか…!」
背後からの嘲笑うような声に、ギッと射殺さんばかりの視線を向ける。
しかし男はその視線に怯むこともなく、寧ろその眼に起きた異変を逃さなかった。
「ほう…、なら、最後の仕上げといこうか」
「ッ、ひ…ッ!」
そう言ってにや、と男は何度目かの笑みを浮かべ、腰を掴んでいた手の片方を遊星の下肢へと滑らせた。
びくん、と、これまでにない程跳ねた身体に驚いたのは遊星の方だ。思わず漏れた高い声に、遊星の中で初めて戸惑いが生まれる。
内側から刺激を与えられていた所為か、遊星の中心は触れられてもいないのに既に起ち上がり、先端から僅かに滲む先走りで濡れ始めていた。
「なんだ、あんなことを言いながら感じていたのか?」
「ッ! っや…めろ、ッやめ、…っ、ぁ…!」
嫌がる遊星を無視してそれを握り込み、男の手は容赦無く遊星を攻め立てる。敏感なそこは直ぐにぐちゅぐちゅと濡れた大きな音を立て始め、それまでの苦痛に呻くような遊星の悲鳴が甲高いものに変わっていった。
弱い所を指で詰られる度に内を穿たれる痛みが別のものに変化していく。おかしいと気付いた時には既に遅く、高まっていく熱を、募っていく衝動を抑えることなどもう不可能だった。
――自分に言い聞かせることで保とうとしていたプライドが徐々に徐々に削られていくことに遊星自身は気付いていなかったのだ。
そして今、こんな行為で快感を得ているのだという言い逃れ様の無いその事実は、遊星のプライドを打ち砕くに値するもので。
「嫌だ、いや、やめっ、…っや…!」
「いけよ、お前の嫌う人間の手でな!」
ぐ、と自身を強く扱かれるのと同時に一層深く穿たれ。
一瞬視界を白くした衝動に遊星が逆らえる筈もなく。
「ッ、あ、…ッ――…!!」
身体の奥に熱を叩き付けられ、遊星は声にならない悲鳴を上げて果てる。
どくどくと注ぎ込まれる熱さに身を震わせ、今度こそその場に崩れ落ちた。
どのくらい放心していたのか、それほど長い時間ではなかったと思う。我に返った時には脱がされた筈の服を着せられて、遊星は部屋の冷たい壁に寄り掛かっていた。
手錠も外され、そこら中が痛むが身体は自由だ。理由はどうあれ、抵抗しないのであれば不必要な拘束はしないらしい。
「(……痛い、)」
一応外面だけは清められているのか、身体中の痛みと内側から込み上げてくる吐き気以外に不快なところはない。だがそちらの方が余程重症で、口の中から内蔵から全部取り出して洗ってしまいたいような気分だった。
気持ちが悪い。
「(…痛い…、)」
もう何処が痛いのかわからなかった。ただただ身体中が痛くて、苦しくて。
身体の横に投げ出していた腕をよろよろと持ち上げ、痛みを抑え込もうと胸元を強く扼する。
それに数瞬遅れて、既に衣服を整え終えて遠巻きに立っていた刑務官が、遊星が動けることに気付いたのか寄って来た。
「――さあ、所長がお待ちだ。行くぞ」
08.05.19. UP
08.06.22. 加筆修正