※決着がつく前に捏造する。バッドエンド(遊星敗北)ネタです。




















 煙を上げて停止したD・ホイールから投げ出された身体は、地面に臥せたまま最早動くことが出来なかった。
 全身傷だらけで何処が痛むのかもわからない。呼吸をするだけで肺が、喉が灼けついたように疼く。はっきりしない視界に映るのは罅の入ったシールド。頭を打った気がしたが、割れたのはその時の衝撃だろうか。辛うじて意識は保っていられたが、腕も、脚も、もう動かせるほどの力は無い。

「――…もう終わりかァ? 遊星」

 ざり、と灰色の地面を踏み締める音。倒れ動けない己へ一歩一歩近付いてくると同時に掛けられる声は暗い愉悦を含んでいる。くつくつと隠しもしない嗤いを響かせる相手は己の直ぐ傍で立ち止まると、禍々しい光を放つ痣の刻まれた腕を躊躇い無く伸ばして来た。
 乱暴にヘルメットを取り払われ、痛みに呻く間も無く前髪を掴み上体を引き上げられる。

「ッ! うあ、ぁ、」

 ぎしりと何処かの骨が軋んだ悲鳴を上げた気がした。激痛に堪らず声を上げた己を、黒に浮かぶ金色の双眸が底知れない闇を湛えて見下ろす。口元には歪んだ笑みを浮かべ、さも愉快だといったように喉を鳴らして。

「あーあぁ…ボロボロだ。よく生きてたなぁ…クククッ」
「…っ…き、りゅ……」

 まるで塵でも扱うかのように己を持ち上げ嘲笑うかつての友の姿に、今の今まで行われていたデュエルの様子が脳裏に蘇る。知らないデッキ、知らないカード、知らない戦術。そして何よりも、自分の記憶に無い彼の姿――あんな風に笑っただろうか。あんなに、つめたい声で。
 苦痛に開けていられない瞼を必死に持ち上げて、唯一動かせる視線を向ける。苛烈を極めた闘いの末敗北を喫した己に、勝者である男はにいやりと口元の笑みを深くし――。

「ッぐ…! ァ、がはッ」

 掴まれていた前髪を突然解放され、身体は重力に従い地に落ちる。強かに打ち付けた頭部を更に足で踏まれ、容赦の無い力が上からかけられた。

「あの一撃で死ねた方がマシだったかもなぁ…。痛い? 痛いか? なぁ遊星?」
「ッぐ、うぁ…あっ…!」
「もっと聞かせろよ…、お前の悲鳴! その苦痛に歪んだ顔! …堪らねえよなァッ…!!」

 既に抵抗する力など残っておらず、されるがまま痛めつけられる。がつがつと踏みつけられ、靴底で詰られ、ただでさえぼろぼろに傷付いた身体は疾うに限界を超えていた。けれどもその苦痛よりも、デュエルで負った傷よりももっと、痛みを訴える部分が、ある。

「ヒャッハハハ…ッ! …けどなぁ遊星ェ、オレはまだ満足してねえんだ…お前が死ぬまで…お前が死ななけりゃ、オレは満足出来ない…!」

 暴行を加えている間も彼は高笑を繰り返し、この行為を酷く愉しんでいるようだった。飢えた獣のような、憎しみをぎらぎらと映す目をすっと細めて嘲笑する暴戻なその姿に、ずきりと胸の奥が痛む。その痛みが悲しみか絶望か、その両方からくるものなのかは、朦朧とし始めた意識ではわからない。

 ……ああ、変わってしまったのか、彼は。

「――…さあ、オレを満足させてくれよ…遊星…?」

 昔の、自分たちに希望を与えてくれた友の姿は欠片も無く。
 狂ったような哄笑が、闇色の夜空に響き渡っていた。
























耐性をつけようと思って敢えて酷い路線に持って行ってみた。

ラフター(laughter)…笑い声