※11/11・クロ遊でポッキーゲーム。
たまに季節ネタに乗ってみようとしてみるとご覧の有様だよ!!(遅刻話)








「クロウ、これは?」
「ん?」

 午前中の配達から帰って来たクロウに手渡された昼食の中に、菓子の箱が入っているのを見つけた。
 時刻は丁度正午過ぎ、クロウの宅配の仕事が昼休憩になる時間である。遊星は白いレジ袋の中を覗き込み、他ならぬ買ってきた本人へ問い掛けた。Dホイールの開発のために節約を掲げている彼にしては、こういう嗜好品を買って来るのは珍しい。
 袋の中から取り出したそれは、シティではポピュラーらしい赤いパッケージに白い文字のものだ。そういえば、食べたことはない。

「ああ、なんか店で宣伝してたから、つい買って来ちまった」
「宣伝?」
「今日はその菓子の日なんだってよ。たまにはいいだろ?」

 黒鴉印のダンボールを積み上げ終えたクロウは、黒いグローブを外した手で隣の作業台の椅子を引き寄せつつ答える。何処か弾んだその声に触発され遊星がまじまじと箱を見つめていると、椅子の背凭れを前にして座るクロウに横から奪われてしまった。

「ちょっといいことを聞いてさ、試しにやってみるかなあと」

 そんなことを言いながらクロウはさっさと箱を開け、取り出した小袋に手をかける。陽気な鼻歌を聴きながら、遊星は床に置かれた残りの菓子とクロウの小袋を開封する手元に視線を行き来させ首を傾げた。いいこと、とは一体何なのだろうか。
 そうこうしているうちに、クロウの指がチョコレートでコーティングされたスティック状のビスケット菓子をつまみ出す。そのまま食べるのかと思いきや、ずい、とチョコのついた方が遊星へ向けられた。

「はい、あーん」
「……食べるなら自分で、」
「だーめだ。いいから、口開けろって」

 何を企んでいるのか、語気を強めるクロウに遊星は渋々口を開ける。咥えるだけな、と差し出されたその先端を注意深く口に入れて、折らないよう加減しながら歯で挟んだ。
 意図せず舌先が触れる。――甘い。

「よし、落とすなよ」
「? …ん、」

 そう言って菓子から離れたクロウの手が、遊星の頬に伸びる。何事か、と、遊星がそう思う間も無く、咥えた菓子の反対側へとクロウが齧り付いた。

「ッ、ク…!」
「そのまま」

 何をしているんだと驚く遊星を置き去りに、クロウはサクサクと音を立てさせて端から菓子を食べていく。
 段々と近づく互いの顔。あと数ミリ、寸前まできた瞬間、クロウがにやりと笑った。

「ぅ、…!?」

 両手で頬を包まれ、予想以上の力でぐっと引き寄せられる。がたんと椅子を鳴らしクロウが立ち上がったのに遅れて、遊星は彼に口付けられたのだと気付いた。
 残り僅かな菓子ごと喰らい付かれる。突然のことに固まる遊星を余所に、至近距離にある灰紫の瞳が意味ありげに伏せられ、後頭部と背中へと腕が回り更に強く抱き寄せられた。触れるだけに止まらず唇の隙間から侵入したクロウの舌が、探り出すように遊星の舌を捕らえる。

「ふ、…ぁ、ン…!」

 ――あま、い。
 ぞくりと背筋を走り抜けた感覚に遊星は身震いした。チョコレートの甘さが、クロウの舌が触れる度痺れるように伝わってくる。
 最初の強引さと違いやさしく貪るようなキスに脳髄まで侵されるようだった。一頻り口腔を蹂躙され、菓子の所為だけではない甘さに目眩がして思わず目を閉じる。苦しいくらいの甘さに息が出来なくなるような気さえして、無意識のうちにクロウの腕へと縋り付けば支えるように抱き締められた。
 そのまま、口付けは無限ともつかない間続けられ。

「…――ふ、は、っ」
「ん…、ごちそうさん」

 ちゅ、と一度舌先を強く吸われ、漸く離れた唇はそんなことを言ってのけた。酸欠でくらくらしながらも恨みがましく見上げれば、クロウは至極満足そうな顔をしていて。

「……クロウ、」
「あー…わりぃ! いきなりだったな」

 悪戯が過ぎた、と申し訳無さそうに言うクロウに遊星は溜息で返す。――いいこと、というのはそういうことだったのだろうか。
 キスの余韻の抜けない遊星は、何時の間にか床に置かれていた菓子を拾い上げた。まだ一本しか減っていないそれから徐にもう一本を取り出して、先程やられたようにクロウへと向ける。

「……えーっと、遊星?」
「こうやって食べるんだろう? まだ残ってる」
「いや普通に食…、まあいいか」

 差し出した菓子を引っ込めそうにない遊星に、クロウはかりかりと頬を掻きながら椅子に座った。背凭れに両腕を置き、あ、と開けられたクロウの口に菓子を入れようとして、遊星は思い出したように告げる。

「キスは無しな」
「…マジで?」

 生殺しじゃねーかと毒づく口に菓子を押し込み、遊星は仕返しだとばかりに微笑んで。

「冗談だ」
「……こンの、覚悟しとけよ」
「ああ」

 意地悪く笑うクロウの首に腕を回し、笑い返す。
 未だ甘い熱の残滓を感じながら、遊星はクロウが咥える菓子へと齧り付いた。
























ガタイの差をテクでカバーするクロウさんに燃える。萌えるじゃなくて燃える
※実質的なテクじゃなくて不意打ちとかそういう類い
策士二人燃える

やさしいけど鬼畜なクロウ様萌えが有頂天ですよホントにもう!