左の頬に刻まれた金色の印を指がなぞる。
 骨張った、けれどもカードを扱う繊細な指先は、触れるか触れないかのぎりぎりの位置を保ったまま、つうと上から下へゆっくりと滑り降りる。
 何とも言い難いくすぐったさに身を竦めると相対する彼はくすりと微笑して、親指の腹でマーカーを撫でた。

「痛んだか?」
「…とてもな」

 左目の下から頬を辿る不適格者の烙印。これを刻まれた瞬間は、よく覚えている。

「オレの所為か」
「それは違う」

 なぞる指先はまるで慈しむようなひどくやさしい手付きなのに、さも自嘲するかのように言うから、即座にそれを否定した。
 確かに彼との決闘で予想もしなかった事態が起こり、結果的にこうなってしまったとも言える。だがこの烙印の罪状は不法侵入についてだけだ、危険を冒した自分にそれが返ってきただけのこと。

「運が、悪かっただけだ」
「…そうか」

 告げれば、相手は紫色の瞳を細めてふ、と微笑んだ。
 頬に触れていた手が顎を捕らえ、くい、と向きを変えられる。互いに正面から向き合っていた顔が逸れ、視線だけを訝しげに向ければ、今度は唇が印に触れた。

「…オレの所為なら、」

 触れるだけのくちづけを頬の刻印に幾つも施しながら、淡々と言葉を紡ぐ。

「オレがつけたと思えるんだがな」
「…ジャック、」

 とん、と軽く肩を押されて、揺らいだ身体は寝台へと沈んだ。
 背中から倒れた自分に覆い被さる影を見上げれば、綺麗な紫の瞳と、揺れる金色の髪。

「お前は、オレのものだ。遊星」
「…ああ、」

 それに答えて、ゆっくりと降りてくるくちづけを甘受した。