何かを求めるかのように差し出された両の腕。常日頃口数の少ない友の突然の行動に、ジャックは訝しげに眉を顰める。
「…何だその腕は」
「抱き締めたい」
「急に何を言い出す…」
返答に心底呆れて重く息を吐き出せば、遊星の瞳がほんの少しだけ翳ったのが眼下に見えた。他人から見たらわからないような変化でも感情が量れてしまうのは長い付き合いの賜物か。
頭一つ分低い位置で、青く光る夜空のような双眸が落胆を示している。
「そういう情けない顔をするな」
「だめなら、抱き締めてくれ」
「話を聞け、全く…」
そんな淋しそうな目をして腕を広げるのは最初から抱き締めてくれと言っているようなものだ。それをわかっているのかわかっていないのか――抱き締めたいなら、抱き締められたいのなら、自分から飛び込んで来ればいいものを。
こいつは本当に何処か抜けている。そう思いながらジャックは再度溜息を零して、思う程は無い、けれども届くには遠い遊星との距離を、歩幅ひとつ分だけ詰めた。
青い瞳が、予想外だとでも言うように見張られる。
「…ほら、」
コートのポケットに突っ込んでいた手を外に出して、広げる。眼下の無表情が動いて、くしゃりと切なげで歪な微笑みを浮かべた。
弾かれたように飛び込んで来た遊星を抱き締める腕が、やさしくあればいいと、思う。
二人とも不器用