彼にとってサテライトは愛すべき故郷であり、同時に罪の象徴である。


 彼は罪を担いでいる。ある時突如として彼の元に舞い込んだそれは、彼の父親がサテライトを見舞った崩壊と荒廃の元凶を生み出したという隠された真実だった。以来、彼はそのか細い双肩に、顔も知らぬ父親の罪を担いでいる。
 この荒廃しきったサテライトにあるまじき純粋さと優しさを持ち合わせ、歪むことなく真っ直ぐに育った彼は、身も心もすべて捧げてその罪を償おうとするだろう。彼の持ち得るすべてをサテライトに、そこに住む人々――罪というならば被害者と云うべきか――に注ぎ込むだろう。だが果たしてそれは、彼がその身を、その命を捧げるだけの価値があるのだろうか。
 元来他人への、大切な仲間への尽力を惜しまない彼の、仲間の為という名の自己犠牲は日に日に加速している。それまで彼の明晰な頭脳で冷静に判断し回避していた危険を、自ら冒す回数が増えた。それに反比例するように、仲間を頼る回数が、元々少なかった表情の変化と口数が減っていく。
 いつしか彼は仲間と共に存在しながら独りだった。近くにいながら何処かで距離を置いている。罪悪感という名の、距離を。

 彼は、不動遊星はサテライトという名の罪に、その贖罪に身を沈めようとしている。かつて共に高みを目指した不動遊星は、あの日彼が真実を知った瞬間に失われてしまった。彼が背負うと決めた罪は、決して、決して彼自身の罪ではないのにも関わらず。
 裏切られた思いだった。幼い頃から共に同じ夢を見ていた友が、その夢を捨て自分を捨て、仲間はおろか名も素性も知らないような数多いるサテライトの人々に自らを捧げることを選んだ事実。それは失望よりも深く己の心を抉った。目指していた道を、決定的に違えてしまった瞬間だった。

 ――しかし。しかしだ。不動遊星という男は、物事を簡単に諦められるほど器用ではない。来るものを拒まず去るものを追わない彼が、その実誰よりも強い疑心や敵意、執着を持ち、時には手段を選ばぬ行動に出ることも躊躇わないほど欲深いのを知っている。無愛想と称されるあの鉄仮面の下に、誰よりも燃え滾る激情を宿しているのを知っている。あの青い瞳に、灼き尽くすほどの炎が燃え上がる瞬間を知っている。
 ならばその燻る激情に火をつけてやる。そうして奴の前にひとつの選択を突き付けた。栄光を掴むのは奴と己のどちらか、逃げることは許されない選択を。たとえ栄光を放棄しても、贖罪の象徴であるサテライトを離れ己を追うという選択を! ありもしない罪の為に俺たちが求めた未来を、手放すことは許さない――!


 不動遊星にとって、サテライトは愛すべき故郷であり、同時に罪の象徴でもある。決して捨てることの出来ない守るべき場所である。
 しかしジャック・アトラスにとってそれは、愛すべき故郷であり守るべき場所であると同時、友と己の目指すものを違えさせた、憎むべきものだ。
























彼の主張に異を唱える


(ジャ遊仲違いの内容を考えた結果がこれだよ!)