――今更収容所の辺りを書いてみた
ぎしぎしと身体が軋む。何故だろう、そう思ってから漸く、遊星は身体が動かないことに気付いた。鉛のようだというのはこういうことかと、意識が戻ったばかりのはっきりとしない頭で呟く。薄暗い天井。機材の小さな明滅を反射する壁。見覚えがある――気を失う前と変わらず無機質な景色に、遊星は己の置かれた状況を思い出し嘆息した。
取り調べだと連れて来られた先は医務室で、取り調べだった筈が身体検査だと言われ、受けてみればそれはまるで拷問だった。セキュリティの奴らが何がしたいのかさっぱり理解出来ず、抵抗することも許されなかった遊星は、その拷問とも言うべき取り調べに従う他なく。何処で意識が飛んだのか、電撃責めだの何だのでさっぱり憶えていない。
恐らくその取り調べ、の所為だろう。身体も精神もひどく疲弊していて、医務室の硬い寝台に寝かされぐったりと身体を預けたまま動くことが出来ない。先程までのような――遊星の言う先程、からどのくらい時間が経ったかはわからなかったが――拘束はなくなっているが、辛うじて動かせる指先も長時間電流を流され続けた所為か若干痺れが残っていて殆ど力は入らなかった。
頭が痛い。未だ身体中を痛みが駆け巡っている気さえする。
「起きたか」
唐突に声が掛かる。薄くぼやけた視界の中で声の方に視線だけを寄越せば、白衣に眼鏡の男――医者というより研究員のようだ――が遊星を見下ろしていた。
「困るな、検査が終わらないうちに気絶されては」
――ああ、まだ、やるのか。
心底迷惑だとでも言わんばかりの男の声に、遊星は半ば諦めたように心中でごちる。
抵抗する気など、疾うに失せていた。