※今更すぎる闇ジャ×遊星さん
遊星さんはジャの力でダグナ化
刻々と過ぎ行く筈の時間が、永遠のものになった。
まだ時刻は昼間だというのに、閉め切った室内は煌々と人工の照明に照らされている。否、昼も夜も、もう関係無いのだ。時間の経過も、生きることさえも、亡者として蘇ったこの身体にはもう、関係無い。
与えられた天蓋付きの豪奢な寝台。その上で膝を抱えて小さく小さく身体を丸め、遊星は殆どの時間を嘆いて過ごす。明確な回答の無い幾つもの疑問が頭に浮かんでは消え、悲しみばかりが胸中に込み上げてくる。縋り付いていた希望も尽く打ち崩されて最早記憶の中のものに過ぎず、悲嘆に沈む遊星は黒衣を纏う膝へと顔を埋めた。
外は見たくない。目覚めて目にした光景にひどい絶望を覚えたからだ。聞こえるのは決して遠くない何処かでマグマの爆ぜる音。たとえ耳を塞いでも聴覚に届くそれを聞きたくなくて、遊星は思い切り目を瞑った。噴煙が覆った空からは日射しも月明かりも差し込むことはなく、赤々と燃え上がる溶岩と火の粉が暗闇に包まれた世界を照らし出している――ただそれだけだ。
何もかもなくなってしまった。守りたかった故郷も、仲間も、思い出も。
ここから動きたくない。――どうせ部屋から出ることは許されないのだ。
……そうしてどれくらい経っただろうか。カチャリという軽い金属音と共に扉の開く音がして、遊星は沈みきっていた意識を僅かにそちらへ向けた。
扉の影で、ロングコートの黒い裾が翻る。微かな衣擦れの音に続く硬質な靴音がゆっくりと近づいて、寝台に遊星以外の体重がかかった。
「――遊星」
ぎしりと、重く、重く軋む音がする。
「今帰った。一人にさせてすまないな」
耳元に囁かれる、既に閉じてしまった人生の中で遊星が最も聞き慣れた声。抱えた膝に埋めた頭を抱き寄せるように撫でる手も、もうずっと慣れ親しんだものの筈だった。
離れていた二年間、ずっと焦がれていた。それをこんなかたちで、再び触れ合うことが出来るようになるだなんて。
――途端に、喉の奥から嗚咽が込み上げる。
「遊星……ああ、泣かなくていい」
逃げるように顔を隠して小さくなる遊星に、頭を撫でていた手が伸びる。僅かな隙間から侵入したそれは遊星の頬に触れ、涙に濡れた顔を曝け出してしまった。
強い眼光が少しだけ和らいだアメジストの瞳と目が合う――黒い闇に浮かぶ、紫と。
「――……ジャ、ック、」
「ほら……嘆く必要がどこにあるというのだ」
背中に回された腕に抱き寄せられる。まるで安心させるように背中を、後頭部を撫で、一度離れるのと同時に緩く口付けられた。幼い頃、心細さを埋めるように抱き締めあったのを思い出させるようで――けれどもその言葉と身体にあの頃のぬくもりはなく。
「俺たちはもう、ずっと一緒だろう?」
抱き締める肩越しに、鏡に映る自分の黒い眼を見る。
もう、戻れない。