嬉しいけど悔しくて悔しいけど嬉しくての無限ループ(クロ遊)
護ってやりたくても俺の腕では足りないことを知っている。あいつらのように大きくも、強くもない。決定的な何かが不足していて、埋まらない。それを知っている。
「クロウ」
俺を呼ぶ声がほんの少し弱い。ちょっとの差だが大きな違いだ。ああまた悩んでいるのか、そう思うのと同時にその悩みは俺が解消させてやれるのか?という疑問。答えはNOだ。俺では足りない。どれだけ護りたくても、どれだけ救ってやりたくても、俺では足りないことを俺は知っている。
だから俺は、もっと別のところであいつを支えようとした、のだ、が。
「抱き締めてくれないか」
お前といると落ち着くんだなんて求められて、俺が断るわけがない。書き仕事はその場で中断。寝不足で足取りの覚束無い彼を隣に招いて、悔しいことに大した力の無い腕で抱き締めてやる。安堵したように目を閉じる彼の謝罪を否定して、相反する二つの感情をひっそりと噛み締める――俺はお前の力になれるなら、どんな些細なことだってしちまうんだよ、くそ!